生放送「台中関係のリセット」

次回の放送は平成29年6月4日 10:00からです

番組の趣旨

昨年5月、台湾史上初めての女性指導者として蔡英文総統が就任しました。蔡英文氏によって「台湾人の台湾人による台湾人のための国づくり」はいよいよ本番を迎えます。その手腕に世界も注目し、6月には「彼女は中華圏で唯一の民主主義国家を率いるかもしれない」という言葉とともに、米誌「TIME」の表紙を飾るまでになりました。

さて昨年12月、蔡英文総統は第45代米国大統領に就任予定のトランプ氏と電話会談を行い、外交分野で大きな成果を残しました。「一つの中国」受け入れを求める中国の圧力で外交的孤立を深めていただけに北京にとっては手痛い反撃となった筈です。

台湾の民主化の起点は、蒋經國が「時代は変わり、環境は変わり、潮の流れも変わった」と語り、戒厳令解除や政治活動、報道の解禁を決意した1986年にあります。その後、台湾で初めての直接投票で李登輝総統が選ばれて以来、台湾の民主主義はどんどん成熟し、現在では、世界で最も自由に発言し行動できる国のひとつになりました。

台湾の重要性は、その内部に抱える歴史と深く結びついています。台湾は日清戦争で清国が敗北した結果、日本に割譲されました。後年、清王朝は孫文の辛亥革命によって倒され中華民國が建国されましたが、その間台湾は日本統治を経験しました。しかし、大東亜戦争の敗戦により日本が台湾を放棄せざるをえなくなってからは、国共内戦に敗れた蒋介石率いる中國國民党の大陸反攻拠点となりました。それは中国共産党にとってみれば台湾は「未完成の国家統一」の最後の地域であることを意味しました。しかし、台湾は統一されませんでした。冷戦による米国の介入や白団に代表される日本の軍事顧問団の活躍があったからです。

21世紀の今日に至るも前世紀の遺物である国共内戦や東西冷戦の構図に縛り続けられている台湾ですが、現在その全体像を変えかねないような事態に直面しています。それは台湾アイデンティティの極大化であるのです。「台湾は中国の一部ではない」と考える人がすでに人口の6割を超え、その結果、自らの国家を求める台湾ナショナリズムはかつてないほどに高まってきました。しかし、中国による「一つの中国」という強力な縛りと中国経済による実利的結びつきとの間で蔡政権は苦しい舵取りを迫られています。

この状況を打開するのは、「太陽花運動(ひまわり運動)」の主体となった強固な台湾アイデンティティを持ち、中国が祖国であるとは夢にも思わない「天然独」(生れながらの台湾独立派)と呼ばれる若者たちかもしれません。彼らの動向がこれからの台湾政治の焦点になっていくのではないでしょうか。

6回に亙る今回のシリーズでは、政権発足一年目を迎え、内外厳しい試練に直面している蔡英文総統の台湾について様々な視点から、その展開と可能性について視聴者の皆様と考えて参りたいと思います。

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