生放送「徳川幕府の宗教政策」

次回の放送は平成29年11月26日 10:00からです

番組の趣旨

学校で教わった歴史で江戸時代というと「士農工商」という身分制度にがんじがらめにされ、農民は重税に喘ぎ、代官や侍たちに一方的にいじめられるなど、汲々とした生活の中で自由もない暗黒の時代と教えられませんでしたか。実際に「水戸黄門」や「七人の侍」などの時代劇や小説の中での経済の担い手である農民たちの暮らしは、自らの収穫物である米も年貢で収奪され、満足に食べることさえできないうえ、五人組みの連座制で縛られ、惨めな存在として描かれていますが、本当にそうだったのでしょうか。これでは内戦や革命もなく265年もの長い間、どうして平和な時代が続いたのか説明がつきません。

江戸時代のわが国は、極楽でも地獄でもないという意味では、ごく「普通の国」でした。どの時代にも為政者の誤ちはあります。しかし、その誤ちに焦点を当てるより、誤ってなかったことに注目する方がはるかに大切なことと思います。私たちは明治以来の長い期間に亙って江戸時代が一種の暗黒の時代だったように思い込まされてきました。明治維新を「日本の夜明け」と呼んだのも、江戸時代がまるで夜の暗黒の中にあったように思わせるためだったのではないでしょうか。何よりも、学校で使う日本史の教科書が、実際は平穏な時代が長く続いたにも拘らず、身分差別、斬り捨て御免、一揆と飢餓の時代のように描き扱ってきたため、そう思い込んでしまったのです。それは、歴史家が偏見にもとづく歴史観で江戸時代を見てきたからに過ぎません。

しかし現実の歴史では、わが国は黒船来航を契機に明治維新を成し遂げました。そしてアジアで唯一、白人の植民地にもならず僅か30年前後の間に日清・日露の戦役に勝利するまでに国力を伸ばし、欧米列強に伍して世界の五大国に躍り出ました。それはこのような飛躍を可能にした人的、文化的、軍事的な経験の系譜、すなわち社会インフラともいえるひとつの文明的な統治の蓄積があったからに違いありません。

徳川幕藩体制が完全に無くなった明治4年(1871)の廃藩置県から、わずか74年後の昭和20年(1945)には2発の原子爆弾投下という人類史上空前の悲惨な経験をしたばかりか、他国の軍隊に占領されるという歴史上はじめての屈辱を味わい、明治体制は崩壊しました。明治を作りあげた江戸人なら、もっと慎重だったかもしれません。しかし江戸時代生まれの人が減り、明治の富国強兵時代に育った人が主流になり、初心を忘れ《旧弊》や《因循姑息》という理由で古いやり方を破壊し、新しい欧米式の制度や方法にことごとく変えてしまったことも敗因のひとつと思います。

今年は大政奉還の、また来年は明治維新150年の節目ですが、この間、私たちが本気になって江戸時代の先達の生き方に学ぼうとする姿勢は余りにも希薄でした。それは、偏向した歴史観による学校教育の結果です。逆に265年も平穏に続いた時代こそが、本当は振り返る価値があるのです。それは国家を平穏無事に治めるための叡智や工夫が随所に満ち満ちていたに相違ないからです。

今回のシリーズでは虚心坦懐に真実の江戸時代を掘り起こし、どういう世の中であったのか、視聴者の皆様と一緒に考えて参りたいと思います。

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