生放送「物部氏と蘇我氏の対立」
次回の放送は令和7年1月19日 10:00からです
番組の趣旨
古代飛鳥は女性を受容した新進の時代であったと言っても過言ではありません。複数の女帝が誕生し、豊かな感性で、政治に関わったのも古代飛鳥であり、宗教や文化においても女性たちの活躍を抜きにしてはかたれません。なぜ、国が誕生する時に女性の存在が大きくなるのでしょうか?なぜ、古代において女性がこのように力強く活躍したのでしょうか?その答えは「飛鳥」にあるのです。
日本で初めての女帝である推古天皇は、巫女(シャーマン)的要素を備えつつも、仏教の興隆に力を注ぎました。従来どおり神々が宿る自然を厚く敬いながらも、新しい仏教を取り込み、いわば神仏が調和した国づくりをはじめました。そして、東アジア世界と正面から向き合った女性でもあります。このような女性の力は、次の女帝・皇極(斉明)天皇にも受け継がれています。
八十万の神々が坐(います)雰囲気が残る奥飛鳥には、女帝が雨乞いをしたという伝承が残り、自然と一体となってその能力を発揮しました。斉明天皇として再度即位した頃からは、飛鳥の大開発を牽引していくようになり、その記憶は多くの遺跡や景観として現代にも伝わっています。
その思想的背景には、仏教と共に神仙思想が融合したものであり、女帝の圧倒的な意思と指導力がここに垣間見えます。激動の時代を経験したことが、女帝の心に大きく響いたのでしょう。
そして、この国づくりを完成させたのが、持統天皇と夫の天武天皇でした。持統天皇は、夫・天武天皇の国づくりの意思を継いで、「藤原京」を完成させ、大宝律令を制定させ、ここに「日本国」を誕生させたのです。
このように、女性が本来持つ神仏と共感する巫女的要素と、内に秘めた強い力が、国づくりの原動力となったのです。
女性の活躍は、政治だけでなく、宗教や文化の面でも見られます。仏教興隆の先駆者となったわが国最初の僧は、驚くべきことに11歳で出家した善信尼と呼ばれる女性でした。彼女は戒律の法を学ぶために百済に渡り、帰国後には、多くの女性を尼僧として得度させました。このことも、古代の女性に巫女的な要素が備わっていたことと無関係ではないでしょう。
また、『万葉集』には、持統天皇や額田王など、多くの女性歌人たちの歌が載せられています。古代の中国では、女性の立場になって男性が詩歌を詠むことはあっても、日本のように女性が実質的な文化の担い手となり得ていませんでした。女性が実際に詩歌を詠み、それが残されていることからも、古代日本は女性の時代であったと言えるでしょう。そこからは、古代の女性たちの生き生きとした声が聞えてくるようです。
このように、飛鳥の女性を語ることから、日本が「国家」として歩み始め、東アジアを通した世界観が見えて来ます。飛鳥時代を牽引したのは女性でした。彼女たちの手によって、政治・宗教・文化の各方面で、わが国の新しい"かたち"が産み出されていったのです。
そして、「日本国」誕生に関わった女性の活躍を見るとき、世界の中でのこれからの新しい国の"かたち"に、女性の"ちから"が注目されるのだと考えています。
今年は、我が国の一大政治改革である「大化改新」に繋がった、中大兄皇子と藤原鎌足による蘇我氏滅亡の「乙巳の変」から1380年後の同じ、「乙巳の年」に当たります。
そこで、新年最初のシリーズは、『日本国創成のとき~飛鳥を翔けた女性たち』をテーマに、推古天皇、皇極(斉明)天皇、持統天皇や額田王など、当時の女性たちにスポットを当てながら、日本国創成の地であり、日本史上、女性が最も力強く活躍した「飛鳥」という地と、その時代について、視聴者の皆様と共に、番組を通して、新しい国の"かたち"について考えて参りたいと思います。
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第1回 1月12日放送
新王朝の出発~ふるさと飛鳥
- 出演者はコメンテーター/ゲスト/パーソナリティ/アシスタントの順で表記した。
- 初回出演者は太字とした。
- 敬称略