日本の文化思想~日本人の芸能

日本再発見・本篇第157弾 全6回 令和4年12月4日~1月22日放送

番組の趣旨

日本の伝統的な芸能は、成立した時代が異なる様々な芸能が、多彩、多様に共存して現代まで継承されています。一般的に現代では、現代的舞台芸術との関連から、演劇、音楽、舞踊、演芸などといった区分での分類がなされています。これは明治以降の分類で、日本の多様な芸能の分類法としてはあまり相応しいものではないかも知れません。

日本の伝統的な演劇には、能楽、文楽、歌舞伎、組踊りなどが挙げられますが、音楽と舞踊が重要な要素となっています。また、伝統音楽は、楽器も種類も大変多様です。古代から現代に至るまで、生まれも育ちも異なる多種多彩な音楽が層をなして今日に息づいています。語り物や歌い物など、声を使う音楽が豊富なのも特色です。日本の舞踊には、神楽や地域で伝承されてきた民族芸能にみられる踊りなどもありますが、いわゆる日本舞踊は、歌舞伎から生まれた歌舞伎舞踊や、上方舞などから派生し、見せる踊りとして洗練され発展したもので、邦舞とも言われます。

演芸は、落語、講談、太神楽などの庶民的な寄席演芸の総称で、そのルーツは、古代の散楽、猿楽などに遡ることが出来ます。江戸時代に寄席の発達とともに盛んになり、今日も種々雑多な大衆的な芸能がいろいろ生まれています。

また、日本各地には、地域ごとに継承されてきた民俗芸能が多様にあります。郷土の芸能は、その土地の風土や歴史を反映していて、それぞれの地域文化の中で重要な役割を果たして来ました。

縄文時代の遺跡から出土した土偶を見ると、古代の日本の「芸能のかたち」が多く残っています。笑っている土偶もあれば、歌っている、踊っている、楽器を持っている土偶もあります。言葉や声はわかりませんが、これらは、当時の人たちの「しぐさ」を表現しています。

そして今、現代に生きる私たちは、日本語でものを考え、日本語で夢を見て、自然に備わった「しぐさ」を無意識にしています。長い年月をかけて変遷をたどりながら、脈々と受け継がれてきたものです。民族や国を理解する上で、「しぐさ」と「声」、つまり言葉(言語)は、非常に重要な要素だと言えるでしょう。

日本文化は、文字を書く文化だけでなく、耳で聞き、目で見る文化です。そしてものを語る文化でもあるのです。

日本の芸能というものは、もともと芸能でなかったものが繰り返されることによって、芸能化していきました。例えば、僧侶の説経から講談へという様に発展して来ました。説経を目あてに寺院にやって来る人々のために、語りの芸が磨かれて、講談に、そして更には落語になっていきました。

そこで、今回のシリーズでは『日本の文化思想~日本人の芸能』をテーマに、芸能の原点でもある日本人にとっての「歌」と「語り」を通して、古代からの「日本人の芸能のかたち」について、視聴者の皆様と共に考えて参りたいと思います。

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