この人に聞く~作家・ジャーナリスト山村明義氏

日本再発見・周年篇 第20弾 令和2年3月8日放送

番組の趣旨

自然界を長い目で観察した時、次の世代のことを考えない種は、よほどの幸運に恵まれない限り、別種や外来種の侵入によって駆逐されてしまいます。今、生き残っている多くの植物は、子孫の継続を可能にする戦略を磨いています。広葉樹は昆虫とタッグを組み、花を咲かせ生息域を増やし、椰子の実は海上を漂流して住処を探し、蘭はより美しい花を咲かせて蝶を呼び、多くの動植物が戦略的機能を備えた変異種を登場させながら、種として生き続けているのです。

2018年の暮れ、オーストラリアの大学教授C・ハミルトンが著した『静かなる侵略』という本が話題になりました。この本には、中国からの移民や経済進出によって、自国の政治、教育、安全保障などが知らぬ間に侵されていく哀しい現実が描かれています。しかし、その意図に気がついたオーストラリア政府は、抵抗をはじめ、外資による農地取得のハードルを上げ、重要インフラ保安法を成立させ、国家安全保障法案や外国影響力透明化スキーム法案に着手するなど、立て続けに中国による影響力排除に乗り出しています。一方、わが国では中国による「静かなる侵略」は、すでにオーストラリアよりずっと進んでいます。しかし、対策を講じようとする積極的な議員や官僚、シンクタンクも見当たりません。それが今の日本の統治・主権なのです。こうした動きに対する政府を見ていると、心配になります。先が見通せず、その場しのぎの対応を繰り返すしかないこの国は、いつの間にか霧中の切所(せっしょ)に立つようになっています。

私たちの多くは今、ある意味で傍観の境地に近いように思われます。昭和末期から平成、そして令和に続く「享楽」的価値観。私たちは豊かさを享受するのに夢中で、危機が眼前に現れるまで、いや目の前に証拠を突きつけられても、なお目をそむけ、耳をふさごうとしているのではないでしょうか。そういった社会の風潮を察知してか、若者たちは希望のもてない未来を見切り、子孫繁栄より自分自身の人生を生き抜くことで精一杯になっているようです。

かつて、「戦闘航海支障なし、戦闘航海支障なし」――そう打電し続けながら、沈んでいった戦艦がありました。フィリピン・レイテ沖で魚雷とアメリカ艦6隻から集中砲火を浴びながら、なすすべもなく海の藻屑となった戦艦「山城」です。どんな危機的状況になっても、与えられた命令にひたすら忠実に従っていくのは、帝國海軍の矜持でした。改革開放で走りはじめたら止まらない、国が侵蝕されつづけても何の声も上げない、事実を誰も認めようとせず、大丈夫、異常なしと唱えながら沈んでいくのは、私たちの国民性のような気もします。

しかし、傍観するより前に、チャンスが少なくてもやらなければならないことがあるのでは、と思います。国家に向かっては一個人では立ち向かえないし、立ち向かってはならないのかも知れません。けれども幸いにも、わが国では、言論の自由は認められています。

本日は、特別番組として、作家でジャーナリストの山村明義先生に「日本が消えないために、日本人が持つべき志と解決法」を伺って参りたいと思います。

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