封じられた歴史がよみがえる

日本再発見・本篇第141弾 全3回 令和2年12月6日~12月20日放送

番組の趣旨

「一国の人々を抹殺するための最後の手段は、その記憶を失わせることである。さらにその歴史を消し去った上で、まったく新しい歴史を捏造し、発明して押し付ければ、間もなくその民族は、国の現状についても、その過去についても、忘れ始めることになるだろう」と、チェコの作家ミラン・クンデラは記しました。

この箴言を見事なまでに実践したのがマッカーサーの占領政策でした。昭和20年11月25日に「神道指令」を出します。さらに12月31日には「修身、日本歴史、地理の授業停止」の指令を出し、学校の教科書の書き換えを命じます。ここに、日本人が日本人となる文化伝統、歴史、記憶の抹殺が図られたのです。これにより、古事記も日本書紀も、八紘一宇の神武建国の理想も、古来から語り継がれたおとぎ話まで消されてしまいました。このことが日本人の精神に与えた影響は計り知れません。国家のために尽した忠臣や武将の名を削り、反対に反逆者や不忠者を称えるようになりました。戦後の日本の教科書は徹底的に「反日」に偏向するよう、仕向けられ、日本の歴史を学ぶほど、祖国を憎み、嫌うようになってしまいました。

そして、連合国は昭和21年5月、極東軍事裁判を開廷し、日本を侵略国として犯罪国家に断罪する新しい「太平洋戦争史観」を注入します。これによって国民の怨嗟の声を、米軍に向けるのでなく、当時の為政者と軍部に向けさせることに成功しました。戦後75年経っても、多くの日本人はこの呪縛から逃れられず、為政者、軍人を悪、国民をひ弱な犠牲者とすることが習い性となってしまいました。

日本の歴史「国史」は、決して安穏としたものでなく、外的・内的な危機に直面するたびに心ある国民が立ち上がってその一貫性が守れてきたものでした。その連鎖にとって最大の危機が、明治以後の西欧文明との出会い、必要に迫られた日本社会の近代化、そして資本主義経済の導入と社会構造の激変でした。

その危機に際して明治天皇は、子供たちに「古人」の姿を伝え、現代に残された彼らの足跡をたどれば、そこに生き生きとした古人の魂が立ち現れるとお考えになり、明治23年10月30日に「教育勅語」を煥発されたのです。それは、歴史と個人との連携を取り戻し、近代資本主義の中で疎外された個々人の精神を復興することを意味していました。しかし、その教育勅語さえもGHQによって消されてしまったのです。

三島由紀夫は大東亜戦争に対して「あの戦争が日本刀だけで戦ったのなら威張れるけれども、みんな西洋の発明品で、西洋相手に戦ったのである。ただ一つ、真の日本的武器は、航空機を日本刀のように使って斬死した特攻隊だけである」と記しました。近代という「黒雲のようにむらがる」敵、単なる連合軍だけでなく、世界を「功利主義、物質主義」で埋め尽くそうとする世界観に対して、かつての忠臣たちのように「七生報国」の精神で、「古人」と「今人」がともに赴く神話的な戦いであるかのように彼には映ったのでしょう。

現代社会が、グローバリズムという新たな脅威を迎え、近代の行く着く果てに全世界的にナショナリズムが勃興し、近代以前の価値観が、宗教原理主義として爆発し、特に東アジアにおいては、覇権主義の暴力が国際秩序を脅かしつつあります。

今回のシリーズでは「封じられた歴史がよみがえる時」をテーマに、国家的危機に対応すべく、「国史」の精神的復権と「古人」の声を聴くことの必要性を視聴者の皆様と考えて参りたいと思います。

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