日本の国益とは何か?~国家の生存と独立

日本再発見・本篇第164弾 全6回 令和5年12月3日~1月21日放送

番組の趣旨

驚くべきことに、日本の省庁には「国益」を定義した文書が存在しません。対して、アメリカにとっての「国益」とは、「自国の企業が利益を拡大すること」、「政治、経済、軍事、文化など、すべてにおいてアメリカ式価値観を世界に広めること」に他なりません。その目的達成のために、日本とは桁違いの官民癒着構造が存在します。エネルギーの「ハリーバートン」、金融と軍事の「カーライル」など、経営陣に政府の元高官をいただき、自らを利するための政策を操る巨大企業は、まさに「国益ビジネス」です。一方、中国は「西暦2025年までに、軍事、経済の面でアメリカを抜き、世界一の座を勝ち取る」ことを国家目標とし、技術や資金調達に余念がありません。

対して、「国益」と「威信」をかけて激しくしのぎを削り合う大国をよそに、我が国はあまりに無定見、かつ無防備なのではないでしょうか。

我が国において「国益」とは、国家あるいは国民社会にとっての最良の価値、利益であり、それは、国家、特に政治指導者たる対外政策決定者がその対外行動において追求すべき価値であり、政治指導者の対外行動基準として機能すべきものと解されています。また、対外政策を通じて追求される国民全体的な利益を指し、国内政策における「公益」に相当するものという見解もあります。

このような利益の中で議論の余地のないものは、「国家の生存と独立」であり、最終的には自衛力を行使しても確保されるべき利益と考えられています。他方、「国家の生存と独立」から導き出される政策目標や優先順位は必ずしも自明なものではありません。特に経済的繁栄、社会的価値などを含めて国益を考えた場合、政策目標や優先順位の組み合わせは複数にも及び、このようなものを含めた国益を一義的に定義することは容易ではありません。

日本政府は、平成25年12月17日の閣議決定において「国家安全保障戦略について」、次のように発表しています。

「我が国の国益とは」、「主権・独立を維持し、領域を保全し、我が国国民の生命・身体・財産の安全を確保すること」と述べつつ、「経済発展を通じて我が国と我が国国民の更なる繁栄を実現」することであるとしていますが、他方、「アジア太平洋地域において、自由な交易と競争を通じて経済発展を実現する自由貿易体制を強化する」ことであるとも規定しました。

しかしながら、我が国の国益追求のためには、「我が国国民の更なる繁栄を実現」が優先されるべきであり、「自由貿易体制を強化」のために、国民の繁栄がないがしろにされることは本末転倒です。このためにも、「国益の定義」が国民に理解される形で示されておくべきことが重要だと思います。

そこで、今回のシリーズでは、『日本の「国益」とは何か?~国家の生存と独立』をテーマに、日本政府のいうところの「国益」とはどういうものなのか、どのような「国益を守り」、どのような「経済利益を得る」のか、我が国にとって、何が「国益」であるかについて、視聴者の皆様と考えて参りたいと思います。

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