ひとづくり問題/岩屋城と高橋紹運

特別篇 第28弾 平成27年12月13日放送

番組の趣旨

 皆様はコスタ・コンコルディアという名称を聞かれたことがありますか。また、セウォルはご存知ですか。

 前者は1912年のタイタニック号の事故から100年目にあたる2012年1月13日に地中海で大きな座礁事故をおこし、浸水・転覆した結果、4299人の乗員乗客のうち死者30人、行方不明者2人を出したクルーズ船です。後者はその2年後の2014年4月16日に過積載で転覆し、乗員乗客476人のうち死者295人、行方不明者9人を出した韓国のフェリー船です。

 本日は事故のことよりも、その時とった船長の行動について話題にしたいと思います。ふたつの場合とも彼らは乗員乗客を尻目に真っ先に持ち場を離れてしまいました。つまり守り避難させるべき人を見捨てて、自分だけ助かろうと真っ先に逃げたというわけです。

 ひとつの地域ないし共同体が危機に陥った時ほど、その国の民度が問われる瞬間はありません。果たしてわが国の戦後教育がこれに応えられるでしょうか。「人権」が説かれ、ことある毎に「いのちの大切さ」を教えられてきた現在の日本人は先ほどの2人の船長と同じ様な行動をとるような気がしてならないのは杞憂でしょうか。

 しかし、意外と気づきの鍵は身近にあるものです。戦後70年も封印されてきた地元史をひとつひとつひも解くことにより、先人たちの公(おおやけ)に殉じる勇気ある生き方を知り、その死生観に触れることにより私たちは新鮮でより大きな発見をするに違いありません。

 今回は、豊臣秀吉の天下統一にも深い関わりのある大宰府の四王寺山、岩屋城で守る側763人全員が玉砕という苛烈な戦いをした高橋紹運を紹介します。如何に生き、如何に死すかは、人が人たる所以そのものといっても過言ではありません。御身大事と保身に走り、信義を踏みにじり、私欲省みず生に執着する輩は人に非ず、と義を貫いたそのメンタリティこそ、現代の日本人が鏡とすべき大切なものといえるでしょう。

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